企業交流委員会金融セミナー 第2回 5月23日(月)

知っておきたい民事信託(家族信託)の基礎知識

中央大学研究開発機構教授 博士(法学)
八谷 博喜 氏

 金融セミナーは、「知っておきたい民事信託(家族信託)の基礎知識」と題して、三井住友信託銀行専門理事の八谷博喜氏をお招きして開催されました。身近な認知症対策としてのテーマということもあり、24名の会員が参加。今回のセミナーの関心度の高さがうかがえました。


 はじめに、芳井敬一専務理事、続いて三井住友信託銀行常務執行役員中野俊彰氏よりご挨拶、その後、八谷氏から講演いただきました。

芳井敬一専務理事

 高齢化が進む日本の社会環境や、認知機能に問題のある高齢者の財産管理が社会問題となりつつあること、そのような環境下で信頼できる家族などに後見的な財産の管理を任すことのできる「民事信託」の活用が注目を浴びている
状況であることを、わかりやすく説明いただきました。

 次に、成年後見制度や代理制度と対比しつつ、民事信託の特徴や機能の説明がありました。民事信託によって財産の名義は委託者から受託者に移転され、委託者の判断能力が低下後も、信託契約に沿って受託者の名義で管理・処分されること。また、亡くなった後の資産承継について次の次の承継者を指定できるなど、遺言では実現できない機能を持たせることができる(遺言では次の代への承継しか指定できない)などの信託の特徴および機能(有用性)の解説がありました。
 加えて、信託財産は、独立性があるため、受託者の相続財産とはならず、倒産隔離機能があり、相殺・差押えの対象にならないことなどの具体的な機能について詳しい説明がありました。しかし、民事信託は非常に強い制度であるため、家族受託者には信認および自覚が必要であること、複数不動産間での損益通算ができなくなること、弁護士等法律専門家の関与の必要性や組成コスト(監督がある時は監督人費用)がかかることなどのデメリットについても詳しく説明いただきました。

最後に具体的な事例や導入に当たっての専門家との相談手順についての説明もあり、受講者は具体的なイメージを持つことができたのではないかと思います。

締めの挨拶は、井上均企業交流委員長が行い、閉会となりました。その後、活発な名刺交換が行われたことはご推察の通りです。

井上均企業交流委員長

セミナー終了後に行われる懇親会は、コロナ禍の感染防止に配慮し、残念ながら行わずに解散しました。講師ならびに会員相互間の交流をもっと図りたかったとの思いがありました。早くコロナ禍が収束することを願う気持ちを強くするものとなりました。
(企業交流副委員長 坂間 明彦)

企業交流副委員長 坂間 明彦 氏