企業交流委員会 金融セミナー 11月29日(火)

 「金融セミナー」が、参加人数を制限するなどコロナ感染防止対策を確り執り、2022年11月29日(火)18時より、一ツ橋ビル4階会議室にて金融セミナーが開催されました。

日時 2022年11月29日(火) 18時―19時30分
テーマ「コロナ禍で注目された金融機関と今後の在り方」
講師 川崎信用金庫 理事長 堤 和也氏/中央大学商学部 昭和62年卒業、南甲倶楽部会員


 企業交流委員会主催の金融セミナーは、「コロナ禍で注目された金融機関と今後の在り方」と題して川崎信用金庫 理事長 堤和也氏をお招きして開催されました。 締めの挨拶は芳井専務理事より頂き、閉会後は活発な名刺交換が行われました。ここではご来場が叶わなかった方へ講演内容の一部をお伝えさせて頂きます。

金融機関の経営環境・川崎市について


 昭和62年と令和4年を比べるとメガバンク、第2地銀、信金の数は大幅に減少しており再編が進んでいる一方で地方銀行はほとんど数が変わっていない。一方で政府による金融機関の合併促進策(特例法・補助金・優遇金利)により地銀の合従連衡も進みつつある。コロナ禍でネット銀行が台頭していることなどから、金融機関の経営環境が急変している。雑誌などでAIにより10年後に無くなってしまう職業に「銀行窓口係」がランキングされるなど産業としての金融機関の未来は必ずしも明るくはない。

 川崎市は全国の自治体で人口が減少する中で、住民が増加しており生産年齢も多く神奈川県をけん引している。ハンバーガーに例えると、東京というバンズと横浜というバンズに挟まれた一番おいしいミート!それが川崎であると説明している。川崎の基幹産業は現在も工業であるが、産業構造は様変わりしている。従来は総生産の約6割を工業が占めていたが現在は50%以下に低下しつつあり、代わって不動産賃貸業やサービス業が上昇している。特に不動産業は2倍以上に成長しており神奈川県の箱もの(賃貸物件)の空室率は全国で3番目に低く、川崎市は神奈川県の平均よりも低い。つまり川崎市の不動産物件の稼働率は高く、不動産賃貸業は川崎市の重要・有望な産業となっている。

住民・企業・行政が一体となっての川崎イメージの180度転換


 川崎フロンターレ、ミューザ川崎(音楽ホール)、岡本太郎美術館や藤子不二雄ミュージアム、新百合ヶ丘や武蔵小杉の発展などの影響もあり、現在は「音楽・芸術・スポーツの街」の明るいイメージが定着しつつある川崎市だが、過去は「公害とギャンブルと風俗」の印象が強かった。映画「ゴジラ対ヘドラ」の舞台として取り上げられたり、ヴェルディ川崎も東京へ去り大洋ホエールズも横浜へ移転するなどスポーツや文化が定着しないと言われたりと苦い思い出もある。

 現在の川崎市があるのは、重厚長大産業に安んずることなく「住民・企業・行政」が一体となって取り組んだ成果と理解している。ここではそのような取り組みの一部を披露したい。

【川崎モデル】
 川崎市には「川崎モデル」と呼ばれる中小企業支援の取り組みがある。東芝や富士通、日立製作所などの大企業が保有する開放特許を市役所や市の財団が仲立ちとなり中小企業による活用を促している。中小企業は大企業の優れておりかつ安全な特許を安価に活用でき、大企業も発明の対価を受け取れるほか社員のモチベーション向上にも貢献している。
 川崎モデルは宮崎県、長野県岡谷市など、他の自治体も共に取り組む広域連携へ発展しており、ますますプレゼンスを発揮している。

【出張キャラバン隊】
 市役所と信用金庫がキャラバンを組み窓口に来られない市民の元へ訪問し相談や申請を受け付ける。川崎市では「おせっかい」と「えこひいき」を良しとしておりニーズのあるところには呼ばれなくても出かけていく活動を行っている。お役所的な考えからは公平でないとか、なぜ川崎信金なんだという声もあがるものと思われるが官民が一体となって取り組んで大きな成果が上がっている好事例である。

【川崎じもと応援券】
 新型コロナに対する経済対策として2020年に「川崎じもと応援券」が発売された。第1弾は購入額の30%のプレミアムを付与し市民にも地元企業にも資する施策であったが、準備不足もあり応援券を使えるお店が少なく浸透しなかった。かかる状況を受けて川崎信金では、渉外係の融資や預金の目標を一時的に全廃し、川崎じもと応援券の拡販と使用可能店舗の開拓に注力した。川崎信金としては応援券から収益は生まないものの地域が活性化し川崎市が発展すればよいとの判断。結果、直近では2022年に発売された第3弾も完売するなど大いに普及が進んでいる。

【川崎市出張窓口の開設】
 川崎市は南部、中部、北部のエリアに分かれるが、北部には川崎市役所の窓口がなかった。川崎信金では店舗のフリースペースを提供、市役所は人材を派遣し北部に出張窓口を開設した。北部は農村部であったが元々行政サービスへのニーズはあるが窓口に足を運べない環境であったと思われ、ふたを開けたら最も相談数の多い出張所となっている。

今後の金融機関の在り方・川崎信金の強み

 小企業であり経理担当の専門部署を有していない小規模企業が多い。信用金庫の最大のストロングポイントはFace to Face、お客さまへの近さであると考えており社会を支える重要な役割がある。また、日本人のDNAに、GNN(義理と人情と浪花節)がある限り信用金庫は無くならない(笑)。

【信用金庫と銀行との違い・川崎信金の強み】
 信用金庫には銀行には無い協同組織性、地域金融機関性、中小企業専門性がある。株式会社である銀行にはできない利益第一主義ではなく地域社会の利益を優先した活動が可能であることが信用金庫の強み。

 川崎信金はコロナ禍で行われたいわゆる「ゼロゼロ融資」(無担保・無利子)の市内シェア70%。事業再構築補助金の申請承認件数は、神奈川県内のトップを誇っている。今後更に川崎信金ではコンサルタント業、お客さまの本業支援に力を入れ存在価値を発揮したいと考えている。銀行とは違う地域社会優先、顧客優先の姿勢を有する川崎信金はこれからも顧客に親しまれ求められるものと思う。

 2023年川崎信金は100周年を迎えるが周年を記念し百合丘に職員寮・社員寮を建設するなど各種周年イベントで地域を盛り上げていく。川崎市にお住いの会員の方、川崎信金のご愛顧をよろしくお願いしたい。

企業交流員会 委員 井上馨

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