観劇会「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」「石橋」を観劇  2022年2月19日(土)

南甲倶楽部恒例の観劇会が2月19日に歌舞伎座にて開催されました。

 1つ目の演目は「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」です。次期将軍と目されている徳川綱豊が、浅野家再興と浪士の仇討ちとどちらが義にかなっているか悩んでいた折、赤穂浪士の富森助右衛門が上野介の容貌を確かめたいと浜手屋敷に来る機会に本心を探る名作です。本心を探ろうとする理知的な綱豊と挑発をされても本心を明らかしない忠義者の対決! その台詞の応酬は息が詰まるような緊張感あふれるシーンの連続でその演技力に魅了されました。そして、不意打ちをする助右衛門に、「義」の本質を説く綱豊の長台詞は舞台情景とともに心に刻まれ、日本人に流れる忠節を思い出させてくれました。
 一転して2つ目の演目の「石橋」は、文殊菩薩が住む聖地である清涼山と石の橋を舞台背景に、白頭と赤頭の獅子の精が舞う華やかな舞台です。獅子の長い毛を用いて舞う、右巴、左巴、髪洗い、菖蒲叩きと呼ばれる勇壮な毛振りは圧巻で、白と赤のコントラストが観る者を惹きつけます。特に私たちは花道の横の席で、歌舞伎役者の息づかいや鼓動までもが感じられ、長唄の演奏、華やかな囃子とともに腹に響き、リアル、真の価値を感じました。

 現在、リモートやバーチャルの世界が持て囃されていますが、リアルの持つ空気感、醍醐味は代替が利かない輝きをもつことを感じるとともに、国際化が進む一方で、自国の文化、日本人の美意識を探求し、教養として身につけていく必要性も感じました。歌舞伎の音楽、舞台美術、着物、台詞まわし、物語に触れ、白門の皆さんと日本の文化を堪能する有意義な観劇会でした。
(常任理事 梶田 恵美子)