南甲倶楽部ビジネス交流会 2月26日~2月27日

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総

去る2月26日(日)から2月27日(月)に第35回南甲倶楽部ビジネス交流会が行われました。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
今回のビジネス交流会は「地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総」と称し、ビジネス交流会の中では過去に例を見ない、宿泊を伴い地方創生を学ぶという視察勉強会となりました。このツアーにはビジネス交流委員会の宿谷委員長をはじめ13人の会員が参集し、学習と懇親を兼ねた有意義な時間を過ごすことが出来ました。今回はこの視察の模様の一部を会員の皆様にお届けしたいと思います。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
今回の視察の舞台は千葉県南房総市千倉町。多くの地方が過疎化、超高齢化という問題を抱えているが、千倉町も他の自治体に漏れずこの問題に直面している。千倉町といえば房総半島の最南端に位置し、その温暖な気候を背景に花卉の栽培や水産業が盛んである。しかし超高齢化の影響で、草花を栽培する農家が減少し、耕作放棄地が点在していた。水産業も同様で13あった漁業組合は今や1組合へと減少している。

昨今、行政主導の地方創生で成功している例が少ない中、地方創生に真剣に取り組み、成果を上げつつある企業がある。株式会社ブルー・スカイ・アソシエイツである。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
金子社長によると同社は不動産媒介/金融アドバイザーなどをコアコンピタンスとしており、これを背景として地方創生を進めているとのことである。同社における地方創生を成功させるためのキーポイントは、観光の拠点となる宿泊施設をベースに創生のロードモデルを構築させたことにある。不動産などの資産を利活用し、観光の拠点である宿泊施設でお客様を滞在させることで地域の活性化を図る。そのため元々は小学校が保有する学校行事で利用していた施設を買い取り、新たにホテルとして利活用したのだ。拠点となる宿泊施設は15室、収容人数80名と決して大きな規模ではないが、2019年9月の営業開始から千倉の魅力を伝播する拠点として機能している。そして宿泊客の増大に伴い同社における地方創生事業の仕組みが回り始める。地元での雇用を促進し、現在ではホテルの中庭にグランピング(ホテル並みのサービスを野外で楽しむキャンプ施設)テントを5棟設置。また、空き家となった古民家をリノベーションし、ヴィラとして地域の資産を有効活用している。これは同社の不動産事業として機能している。また、食料の調達を地域の農業や漁業とも連携することで地域の活性化の一端を担っている。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
農業においては、漸増した耕作放棄地を借り受け、新たにサトウキビを栽培する事業に乗り出した。南房総の温暖な気候はサトウキビ栽培の北限に位置する。古くから家庭菜園でサトウキビを栽培する習慣があった南房総の耕作放棄地にサトウキビ栽培をすることに着目。農業事業として「農地所有適格法人きびラボ」を設立したのだ。現在では2町歩の畑で無農薬栽培を行っている。そして収穫時期にはちくらつなぐホテルで東日本唯一のサトウキビ収穫体験やサトウキビ絞りジュースの試飲などのアトラクションを行い宿泊客に好評を得ている。収穫されたサトウキビは濃縮されシロップとしてパティシエに提供される他に、ラム酒として酒造・販売される。そのための蒸留施設として、地元有志と連携しペナシュール房総株式会社を設立。東日本初となるラム蒸留施設「房総大井倉蒸留所」を2022年8月に完成させた。これで栽培したサトウキビを製品化し流通させるサプライチェーンが確立したのである。

今後の展望としては、千倉の各所にある現在は住人のいない古民家を買い取り、リノベーションを行った後、別荘として再販を行っていく事業を進めていく。そしてオーナーが別荘を利用しない日はレンタルヴィラとして借り受け希望者を宿泊させる事業を行っていく予定である。ハウスキーピングはちくらつなぐホテルのスタッフが担当し、自社の持つ不動産事業・観光事業・地方創生事業を連携させると共に、千倉を中心とした南房総エリアを広域連携させ皆様をお迎えする準備が整いつつある。
(『小学校保養所からグランピングも利用できるちくらつなぐホテルへ』
ブルースカイアソシエイツ 代表取締役 金子岳人氏 講義)

金子社長の講演の後は、ちくらつなぐホテルの沖野支配人に館内を案内していただいた。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
先述の通り、ちくらつなぐホテルは元々東京学芸大学付属世田谷小学校の生徒のための保養所として使われていた「青山荘(せいざんそう)」をコンバージョンしたホテルである。ここには世田谷小学校出身である金子社長の想いが詰まっていました。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
青山荘は昭和4年に建立され、昭和49年に建替えられた施設なのであるが、現在の耐震基準に問題があり最終的には閉鎖を余儀なくされてしまった。卒業生である金子社長は青山荘と千倉町の恩返しの気持ちからこの場所をホテルとして生まれ変わらせる決意をしたのだ。観光事業としてお客様に滞在していただく拠点だけでなく、その広い食堂は地域の住人が利用できるカフェとしても機能し、結婚式の二次会や商工会の会議の場としても利用され、地元において大人数が収容できる施設として機能している。

先述の通り、ホテルではサトウキビを使った体験アトラクションを発信し、古民家を改修したヴィラのマネジメントも行う拠点としてホテルは大きな機能を担っていることに関心した。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
最後に当倶楽部のビジネス交流委員会の委員であるブルー・スカイ・アソシエイツ シニアアドバイザー 沖中克也氏に『事例に学ぶ地方創生と地方行政の現状』と題して講演を行っていただいた。沖中氏によると、自治体における地方創生の成功とは、人口が増加し、これに伴い税収が増加することであるとのこと。どの地方自治体も例に漏れることはない。このため、まち・ひと・しごと創生本部と内閣府地方創生推進事務局とが両輪となって施策に取り組んでいるのが現状ではあるが、昨今の大きなショックを与えた新型コロナウィルス感染症が人の意識・行動に影響を大きな影響を与えたと解説する。

まち・ひと・しごと創生基本方針として、①住民の安定収入 ②人口の増加 ③結婚・出産・子育て ④集客の安定化などが挙げられる。

一方南房総地域では、館山までは首都圏からのアクセスは良いが、館山から千倉までの移動手段が少ないという問題を孕んでいる。今後乗合電気自動車や電動三輪車などの二次インフラを検討しているという。

また、地域自治体の本気度も地方創生を実現していくためには重要なポイントの一つである。過去に於いて地方創生の手段として工業団地の誘致や大規模商業施設の建設などが実施されてきた。しかしながら大きなショッピングセンターなどが出来ると近隣に根差していた個人商店などが閉店に追い込まれるなど、決して成功した例は多くないと指摘。一方で東京ディズニーランド、志摩スペイン村、別府温泉など地域活性化に成功した施設もあり、その成功要因分析を行うことで新しい地方創生を行っていく必要があるという。

ちくらつなぐホテルに於いて、従業員は地域に根差すために移住し地元との連携を培っていく他に、その地域で出来ることを中心に伸ばしていくという方針のもと、サトウキビの栽培を行う事となった。サトウキビの収穫は、10月下旬から2月までの間に行います。夏の観光シーズン以外のアクティビティになります。また絞った残渣であるバガス(Bagasse)は餌として「市原ぞうの国に納めている。代わりに象の糞を回収し肥料としており、双方の廃棄物を捨てることなく有効利用出来ているという。このように地元と共に歩んでいける地盤づくりが成功の鍵となることを知ることが出来た。

この後、日本では唯一の食べ物の神様である高家(たかべ)神社の参拝を行い、一日目が終了した。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
二日目は、畑でサトウキビの収穫を行い、ラム蒸留工場である「房総大井倉蒸留所」の見学を実施。畑で収穫したサトウキビを絞って糖汁をいただいたが、ふわっと黒糖の風味を伴ったジュースのようである。ここ南房総は秋・冬には南国と違い寒暖の差が大きくなるためにより甘いサトウキビを作ることができ、その糖度は沖縄のサトウキビの平均糖度が18%であるのに対しここでは22%にも上るという。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
5月に植栽された苗は10月から2月に収穫時期を迎え、収穫されたサトウキビは約2か月でラム酒として生まれ変わる。房総大井倉蒸留所の隣には一日一組限定の古民家ヴィラとして5月より営業を始めるためリノベーション工事が進んでいる最中であった。

地方創生を考えるビジネス交流ツアー in 南房総
こうして、第35回ビジネス交流会は「地方創生」という非常に重要であり且つ困難な問題に焦点を当て、南房総で行われている取り組みを垣間見させていただくことが出来た。今回ご協力をいただいた株式会社ブルー・スカイ・アソシエイツ 金子社長、沖中氏 宿泊でお世話になったちくらつなぐホテルの方々、サトウキビ栽培の解説をいただいた、きびラボの三瓶氏、ペナシュール房総の青木氏など多くの方々にお礼を申し上げます。

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